― ヒトCYP3A4誘導性を再現可能な in vivo DDI モデル ―
Kobayashi et al 2025 PMID: 40721555
薬物代謝におけるCYP3A4/PXR系の重要性
ヒトのCYP3A4酵素は、処方薬の約半数以上の代謝に関与する主要なチトクロームP450アイソザイムであり、 その発現は核内受容体PXR(Pregnane X Receptor)により誘導されます。
薬物間相互作用(DDI)リスクの予測において、CYP3A4の発現誘導および阻害を正確にin vivoで再現する動物モデルは、前臨床試験の信頼性を左右します。
モデルの概要:ダブルヒューマナイズドCYP3A/PXRラット
本研究では、以下の二重ヒト化遺伝子改変を導入したhuCYP3A-PXRラットを作製しました:
- CYP3A遺伝子座のヒトCYP3A4/CYP3A7/B転写ユニットによる置換ラットPXRをヒトPXR遺伝子に置換(肝臓/腸で発現)
技術的アプローチ:
- BAC(Bacterial Artificial Chromosome)トランスジェニック
- MAC(Mammalian Artificial Chromosome)工学
- CRISPR/Cas9によるゲノム編集
CYP3A4の誘導・阻害応答をヒト様に再現
- リファンピシン(RIF:ヒトPXRアゴニスト)投与により、CYP3A4 mRNA発現が肝・腸で有意に誘導
- CYP3A4基質薬物トリアゾラムの水酸化代謝活性が上昇
- RIF前処理により、トリアゾラム血中濃度は減少、代謝物は増加
- ケトコナゾール(CYP3A4阻害剤)を併用すると、逆にトリアゾラム血中濃度は上昇し、代謝物は減少
これらの結果は、ヒトのDDI挙動と整合的であり、本モデルがヒトのCYP3A4誘導・阻害を再現可能であることを示しています。
応用例
- 前臨床段階におけるDDI評価の高精度化
- ヒトCYP3A4/PXRを標的とした薬物動態・毒性プロファイリング
- ヒト様代謝環境における薬剤候補の最適化
まとめ:創薬支援ツールとしての可能性
本CYP3A4/PXRヒト化ラットモデルは、従来のげっ歯類モデルでは再現困難だったヒト特異的代謝誘導現象を再現可能にします。
今後、創薬・開発プロセスの信頼性向上や、臨床予測精度の改善に寄与することが期待されます。
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